まず三味線のどこを見るべきか

どの楽器を購入するにしても、必ず知っておくべき重要な項目がいくつかあります。もし。まだ三味線を買った経験のない方はとくに以下の情報をしっかり把握して自分に見合った三味線をみつけてください。

三味線の価値は棹に使われている木の種類でほぼ決まります。一般的に堅い材質の木は棹に適していると言われています。使われている木材が音の質にも表れるとも言われますが、実際とのところ確かではありません。現在、棹の材質はおもに三種類あります。

花梨
花梨は一番安く手に入ります。材料として柔らかいほうに属し、使いやすいことから、お稽古用に安い値段で広く販売されています。しかし他の堅く丈夫な材木に比べると比較的もろく、古くなると棹部分がそってしまったり長年の使用で表面が削れてしまったりというのがマイナス面と言えるでしょう。
注: すべての三味線の胴部分は花梨です。といっても、安い三味線であれば花梨のなかでもグレードの低い木材が使用され、上等品になるとかなり高級な花梨、木目も色も美しいものが選ばれます

紫檀
紫檀は次に良質な木材です。花梨よりも堅牢なので棹に適しています。しかし、今ではとても手に入りにくくなっており値段が非常に高いのはそのせいです。

紅木
紅木が一番高級な材質です。緻密で堅く歪みがこないので最も棹に適しており、見た目もとても優雅です。残念なことに現状として、紫檀よりもさらに絶滅の危機にさらされており、そのことからもっとも価値のある上等品とされています。
注: 紅木として販売している三味線であっても胴の部分は上級な花梨が使われています

三味線の皮はとても重要な部分で、三味線の音色の80パーセントは皮の種類と張りに影響されます。津軽三味線の皮はおおきく分けて2種類あります。

本皮
津軽三味線のような太棹に使われる本皮といわれる自然の皮は、厚い犬の皮が使用されます。太鼓やバンジョーなどに使われる牛の皮とくらべて犬皮はとても硬く、乾いたシャープな音を引き出せます。初めてのデートなんかで話題にするにはもってこいですね(笑)とにかく、古来からの職人技で皮張りされた三味線は、まさしく芸術的作品と言えます。目が飛び出るほどの値段がするのも当然なのです。

不利な点と言えば、湿気や天候に左右されやすいことです。もし現住所(三味線の置き場にもよります)がひじょうに温度差のはげしい地域にあれば、自然の皮は3年もてばいいところでしょう。カリフォルニアのような年中温暖な地域、または常に三味線を一定の温度に保てる場所であれば、皮は7年以上もつと言われています。三味線のいい音色を響かせるには、本皮は決して無駄のない出費と言えるでしょう。

正しい皮の扱い方のビデオをみてみる

合皮
人工の合皮三味線というのは、薄いフィルムの層も重ねて作られたプラスチックを三味線の胴に張って作られています。利点は、丈夫で破れにくいということでしょう。気温差のある厳しい環境であっても皮は何十年と保つことができます。本皮とちがって水にも強く、三味線を抱えながらアイスクリームを食べたって大丈夫です。

欠点はなんといっても音質の低さです。人工皮はドラムやバンジョーでの使用にはさほど影響しないにもかかわらず、三味線の皮となるとどうしてもプラスチックのぺこぺことした音がしてしまいます。本皮のようにぴーんと張り切った音色がどうしても出ないのです。とはいうものの、現在では高品質の人工皮もどんどん発明され市場に出回ってきていますので、今後の展開が楽しみなところです。合皮のうれしいところは、なんといってもお値段です。伝統的な本皮三味線と比べると音質は劣りますが、まだまだ金銭の余裕のない初心者や初級者にはちょうどいい、便利で手頃な練習用として広く活用されています。

棹には大きく2種類に分けられます。

三つ折り
三つ折り棹は3つの部分に分解できるように作られています。持ち運びに便利で、そのうえ棹が反るのを防ぐというのが大きな理由です。ここでひとつ、とても大事なことは、どの三つ折り棹もバラバラにできるポイントが決まっているということです。その分かれ目が、三味線演奏の際に左手の押さえる勘所の目安となっているのです。フレットのない弦楽器としてはとても大切な事柄です。

ネジやのりを使わず、滑らかにしかもきっちりと取り外しできるというのも三味線職人の伝統技といえるでしょう。 では、Bachidoメンバー新田昌弘が三つ折りの棹を解体し、そして組み立てする映像をごらんください

のべ棹
のべ棹は一本の棹でできています。持ち歩くのに不便だという以外、これといって特に不利な点はありません。のべ棹の制作は三つ折りとくらべてとても簡単でシンプルな作業です。そのため、こちらの三味線は安く手に入れることができます。

さわり

すべての三味線には三の糸(一番太い糸)がジーンと震えるように作られています。ちょうどインドの楽器シタールのような効果です。長唄三味線、そして練習用または安価な地唄/津軽三味線には、下記の画像をみてもわかる通り、糸巻きの下には「さわり山」とよばれる盛り上がった部分がついています。二と三の糸は上駒にかかっていますが、三の糸は直接木にふれるようにつくられているので、弦を弾いた振動で一の糸がさわり山にかすかに触れてジーーーンと鳴るというわけです。

1890年以降になって、さまざまな技術が三味線にも施されるようになり、高級な中棹や太棹三味線にはさわりの具合を微調節できるようになりました。下記の写真に示されるように, 上駒の下の一の糸の通り道に「東(あずま)さわり」とよばれる小さなパーツが取り付けられています。

さわりの効果
お稽古用の三味線には「東さわり」がついていませんが、それでもかならず振動するしくみになっています。それならなぜわざわざ高いお金をだしてまで「東さわり」付きのものを買う必要があるのでしょうか。それは、やはり振動の効果、音色の微調整がきくからです。糸のゲージを変えたり、チューニングをするだけでもさわりのふるえ具合が変わります。自分の好みによって糸の響きを調整したい場合は、やはり「東さわり」なしではいられません。

東さわりについてのビデオをみてみる



それぞれの三味線の音色サンプル


(まだまだアップの予定です)

注: 何度も言うように、音質の80%は皮で決まります。すべての三味線のトーンは皮の厚さや密度によってすこしずつ違います。サンプルの音はお手持ちの三味線のサウンドとはどうしても違ってくると思ってください。