中古三味線
標準とされる三味線やバチの値段がどうしても高くなるのにはれっきとした理由があります。ごく普通の三味線の本体のみだけ(小物類を除く)を購入するとしても、やはり10万円の出費は覚悟しなければなりません。どうしてこんなに高価なのでしょうか。新品だからというのも理由のひとつです。車を買うのと同じように、ディーラーからピカピカの新車を買って乗った瞬間から、その車の価値が大幅に下がります。同様に、オークションや古道具屋、楽器屋店頭で買う場合は、一度なりとも人の手に渡った中古品は新品よりも半分の値がつきます。誰か知り合いから中古を安く買える機会にめぐまれたとき、どんなに美しく価値のある三味線であっても、不完全なものや修理の必要な楽器はさらに出費がかさんでしまいます。逆に、中古だからといって質が悪く価値のない三味線であるとは限りません。
それでは、どのような基準で中古品の値段や価値を決めるのかをというのをここでじっくり検討していきたいと思います。
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1. 皮
皮部分は値段を決める上でもっとも重要なポイントです。表皮のコンディションをしっかり確かめてください。三味線の胴部分からはずれかけていないか、ひどい摩耗や擦り傷などないかもチェックします。皮が破けている場合、張替えるには最低でも三万円の支出を余儀なくされます。もしきちんと皮が張られていれば張り替えずにそのままの状態で大丈夫でしょう。本皮か合皮かもしっかり見極めましょう。皮部分を指で叩いてみて張り具合を確かめ、音を聞いてみるのもよいでしょう。
2. 棹
棹に使われている木の減り具合が大きな手がかりとなります。紅木でない通常の木材であれば、一般に柔らかく勘所が爪でえぐれてしまいます。表面がなめらかでなくでこぼこしている棹は、かんべり直しで研磨してもらう必要があります。漆の加減もチェックしましょう。棹が組み立ててある場合、つなぎの部分がしっかりとはまるかどうか、そして棹の表面が平らにまっすぐであるかどうかも点検しなければなりません。つなぎ目が不安定であったり、ひび割れや傷などがあればもちろん修理に出す必要があります。もし状態がよければそのままで安心して三味線を使用できます。のべ棹は一本のままで胴から抜き出してからねじれていないかしっかり確認し、三つ折り棹は分解して細かい点まで入念に調べてください。
3. 糸巻き
まず折れていないか、腐っていないか糸巻きをまわしてみましょう。三本とも糸を通す穴がきっちりあり、糸巻きの穴にそれぞれ上手くはまるかどうかを確認してください。糸巻き自体が何の材質で作られているかで価値が大きく変わることがあります。古びれていても、じつは象牙であったり高級な黒檀だったりすると、かなり値があがります。あらかじめ知識をつけておきましょう。古い三味線の糸巻き部分は、磨耗していて糸がしっかり固定されないということがしばしばあります。そのような時は糸巻き部分がしっかりとはまり込むように手直する必要があります。もちろんこの作業は、ヤスリなどをつかって個人でも調節できます。できれば糸をつけてみて、しっかり調弦できるか確かめてみるのがよいでしょう。
4. 天神(棹の先端部分)
糸巻きのある天神部分にひび割れや、傷がないかよく確かめてみましょう。糸を張って弾いてみて、自然なさわりの加減を確かめるのもひとつの方法です。損傷がある場合は修理する必要がありますが、そのようなケースはごく稀なので値段に直接かかわることは少ないと言えます。
5. 金具や小物類
三味線に必要な小物類、それに使われている小さい金具の部品もきっちり取り付けられているかどうか確認する必要があります。音緒や駒、胴掛け、指スリ、糸、もしくはバチなどが三味線本体といっしょについてくるかどうかも値段をみるうえでとても重要です。もっと細かいパーツ、たとえば上駒や糸巻き部分の金具に錆や損傷がないかも細かく注意してみましょう。東さわり等がついている場合は、さわりが調節できるかどうかチェックする必要があります。糸を張って弾いてみて、さわりの響き具合を確かめるのが一番の方法だと思います。
6. 木の質
最後に、三味線の木の材質によって値段が決まります。一般的に三種類の木があります。一番安価な花梨、その次が紫檀、そして一番上質の木は紅木です。材料に使われている木材は、堅く狂いがなく、また見た目に美しいものが値段におおきく左右します。見て、さわって、弾いてみて、しっかり見極めてください。
詳しい木の説明
三味線の状態がよい場合は、とにかく弾いてみて、体のなじみ具合や音色を聞いてみましょう。大きさや重さ、使いやすさ、弾きたい曲やスタイルによって自分に合う三味線というのがあるはずです。実際に音を出してみて、納得がいく音の響きと弾き心地であれば少々手直ししてでも手に入れる価値があると思います。
三味線が高価なのは、手の込んだ繊細な楽器だからです。職人の技術がなければ良質で上等であっても三味線の音はなりません。中古であっても職人の手で丁寧につくられ、奏者から愛された三味線はとても価値のある三味線であると思います。
自分のスタイルやニーズに見合った三味線を、しっかり見極めたうえで手に入れてください!